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ユニクロ社のエアリズム・インナーは本当に涼しいのか?


ユニクロ社のマイクロポリエステル繊維を使用したメンズ・エアリズム(AIRism)インナーは本当に涼しいのか?
発汗サーマルマネキンを使用して綿100%シャツと比較実験をしてみました。

この実験は、当社の発汗サーマルマネキンが機能衣服の微妙な性能差を測定することが可能で、
測定結果を製品の宣伝にも使用できるというアピールです。

宣言:私はユニクロ社から宣伝依頼も報酬も得ていません。

1、比較対象


発汗サーマルマネキンでエアリズムを測定
綿シャツ エアリズム
生地 綿100% ポリエステル88%
ポリウレタン12%
サイズ Lサイズ Lサイズ
衿の形状 V首 V首
重量 108.50g 82.57g

考察:見た目ではエアリズムは、綿シャツよりも、
    生地の目が詰まっているように感じます。




2、試験結果


2-1 加温電力(W)
周囲温度
30℃ 33℃ 36℃ 39℃
綿シャツ 安静時 42.00 42.00 42.00 42.00
エアリズム安静時 42.00 42.00 42.00 42.00
綿シャツ 軽作業 72.12 72.12 72.12 72.12
エアリズム軽作業 72.12 72.12 72.12 72.12

備考:運動量=加温電力は、安静時42W、軽作業時72.12Wに設定しました。
詳細は、理論式タブの6項参照。

2-2 熱交換(W)

30℃ 33℃ 36℃ 39℃
綿シャツ 安静時 27.55 16.75 4.19 -8.24
エアリズム安静時 26.73 16.21 4.03 -8.06
綿シャツ 軽作業 29.40 16.66 4.31 -8.22
エアリズム軽作業 28.49 16.28 4.13 -7.93
熱交換グラフ      

考察:グラフは軽作業時の比較です。エアリズムは目が詰まっている関係で、若干ですが熱交換値が低いようです。
    その差は30℃時に1W程度ですから、誤差の範囲内とも言えます。

2-3 発汗量(ml/h)

30℃ 33℃ 36℃ 39℃
綿シャツ 安静時 21.39 39.33 59.37 79.59
エアリズム安静時 22.21 38.05 56.93 74.78
綿シャツ 軽作業 65.67 83.78 103.72 123.88
エアリズム軽作業 64.62 83.87 103.02 120.88
発汗量のグラフ      

考察:周囲温度が高くなるにしたがって、エアリズムの方が、発汗量が少なくなっているように見受けられます。
    その差は、周囲温度39℃時に約3ml/hです。これをW数に換算すると、
     3ml/h × 0.678ml/W = 2.034W
   これも誤差の範囲内とも言えますが、どの周囲温度においても同じ傾向が見られるので、
   W数の絶対値は、ともかく、エアリズムの方が涼しいと言えます。

2-4 無効発汗量(ml/h)

30℃ 33℃ 36℃ 39℃
綿シャツ 安静時 0.09 2.10 3.63 5.52
エアリズム安静時 -0.31 0.02 0.95 0.99
綿シャツ 軽作業 2.69 2.02 3.76 5.44
エアリズム軽作業 0.31 1.54 2.79 2.87
無効発汗のグラフ      

考察:当社の簡易環境試験室は、加温機能と加湿機能しか無いため、
    冷却と除湿は、可変吸気口から室内の冷気を取り込みミックスして調整する構造です。
    夏場の高温多湿(例33℃70%)の条件下では、除湿のためにエアコンを25℃以下に設定しても
    可変吸気口は、全開状態になります。
    一般のエアコンは室温が一定では無く、周期的に1℃程度変動します。
    エアコンの温度が1℃変動すると、環境試験室内の温度が0.1℃程度変動するため、
    精度の良い30℃50%の環境を作ることが難しく、マネキンの測定誤差が大きくなります。
    環境試験室の温度を33℃以上に設定すると、可変吸気口の開度が小さくなり、
    エアコンの温度変動の影響を受けにくくなります。
    綿シャツ軽作業の30℃が、2ml/h程度の誤差を生じているのは、そのためです。
    ですが、傾向を読み取ることは可能です。

    周囲温度39℃において、エアリズムは無効発汗量が3ml/h程度少ないです。
    2-3項の発汗量の差が生じた理由は、無効発汗量の差です。

 では、なぜ綿シャツとエアリズムに無効発汗の差が生じたのでしょうか?
 これは、私の仮説ですが、綿は、吸水性能は良いけれど、速乾性能は良くありません。
 ポリエステルは綿よりも、速乾性能が良いと一般的に言われています。
 したがって、ポリエステル生地は汗を、皮膚表面に近い場所で素早く気化させるため、
 身体を効率良く冷やすことができます。
 一方、綿シャツは、汗を吸収しても、気化しにくく、毛細管現象で皮膚表面から離れた
 綿シャツの表面で気化させるため、気化熱が皮膚表面に伝わりにくく大気中に
 発散したと考えられます。

3、結論


 発汗量の差は、冷却効率の差に比例する。と考えると、発汗量の減少する割合が、
 涼しさの指標に使用できると考えます。
 綿シャツの発汗量を100%として、エアリズムの発汗量の減少割合は次のとおりです。

発汗量の減少(%)
30℃ 33℃ 36℃ 39℃
エアリズム安静時 -3.80 3.25 4.10 6.04
エアリズム軽作業 1.60 -0.11 0.68 2.42

 明らかに測定結果がおかしい30℃を除くと、平均で安静時4.46%、軽作業時1.0%の減少です。
 したがって、

 エアリズム・インナーは、綿100%シャツと比較して、安静時に約4.5%(約2W)涼しい。

 実際にエアリズムを着用してみると、涼しさを実感できます。
 約2W差の比較対象として、冬場のヒーター付きベストは約3W程度の製品が多いことを考えると、
 電力を使用せずに達成できた点は大きいと思います。

 この実験は、エアリズムの宣伝をしているわけでは無く、当社の発汗サーマルマネキンが、
 機能衣服の微妙な性能の差を数値化できるという点を、アピールする実験です。
 第一世代の発汗サーマルマネキンを使用して、下着の発汗による冷却性能を計測することは、
 非常に困難ですが、当社の第二世代の発汗サーマルマネキンを使用すれば、計測可能です。

4、測定結果の確認

 この測定結果は本当に正しいのでしょうか?
 測定誤差の影響もあり、データの意図的な改ざんを疑われても仕方ありません。
 そこで測定した全データを、当社の発汗サーマルマネキンの理論式に代入して確認してみましょう。

実測値 計算値 計算値
③×0.678 ②+④-① ④-⑤ ②+⑥-① ⑥/0.678 ⑤/0.678 ⑦+⑧-③
加温電力W 熱交換W 発汗量 気化熱④ 無効気化⑤ 有効気化⑥ 確認1 有効発汗⑦ 無効発汗⑧ 確認2
綿シャツ
安静
30℃ 42.00 27.55 21.39 14.51 0.06 14.45 0.00 21.30 0.09 0.00
33℃ 42.00 16.75 39.33 26.68 1.43 25.25 0.00 37.22 2.10 0.00
36℃ 42.00 4.19 59.37 40.27 2.46 37.81 0.00 55.74 3.63 0.00
39℃ 42.00 -8.24 79.59 53.99 3.75 50.24 0.00 74.06 5.52 0.00
エアリズム
安静
30℃ 42.00 26.73 22.21 15.06 -0.21 15.27 0.00 22.51 -0.31 0.00
33℃ 42.00 16.21 38.05 25.81 0.01 25.79 0.00 38.03 0.02 0.00
36℃ 42.00 4.03 56.93 38.62 0.64 37.97 0.00 55.98 0.95 0.00
39℃ 42.00 -8.06 74.78 50.73 0.67 50.06 0.00 73.79 0.99 0.00
綿シャツ
軽作業
30℃ 72.12 29.40 65.67 44.55 1.83 42.72 0.00 62.98 2.69 0.00
33℃ 72.12 16.66 83.78 56.83 1.37 55.46 0.00 81.75 2.02 0.00
36℃ 72.12 4.31 103.72 70.36 2.55 67.81 0.00 99.97 3.76 0.00
39℃ 72.12 -8.22 123.88 84.03 3.69 80.34 0.00 118.44 5.44 0.00
エアリズム
軽作業
30℃ 72.12 28.49 64.62 43.83 0.21 43.63 0.00 64.31 0.31 0.00
33℃ 72.12 16.28 83.87 56.89 1.05 55.84 0.00 82.33 1.54 0.00
36℃ 72.12 4.13 103.02 69.88 1.89 67.99 0.00 100.23 2.79 0.00
39℃ 72.12 -7.93 120.88 81.99 1.95 80.05 0.00 118.00 2.87 0.00

この表の内、実測値は①~③です。実測値より計算したのが④~⑧です。
 気化熱W④は発汗量ml/h③を×0.678で気化熱換算したものです。
 無効気化熱W⑤は、②+④-①で多すぎる気化熱を計算しています。
 有効気化熱W⑥は、本来のあるべき気化熱を計算しています。
 有効発汗⑦は有効気化熱をml/hに換算したものです。
 無効発汗⑧は無効気化熱をml/hに換算したものです。
 注)有効桁数8桁以上を小数点以下2桁に丸めて表示しています。

確認1
  加温電力W = 熱交換W + 有効発汗気化熱W
 を確認しました。右辺-左辺を計算すると、全て0.00です。
確認2
  発汗量ml/h = 有効発汗量ml/h + 無効発汗量ml/h
 を確認しました。右辺-左辺を計算すると、全て0.00です。

 つまり、この測定結果は、理論式と整合性が取れていることが確認できます。