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発汗サーマルマネキンとは?




発汗サーマルマネキンとは、人体の体温調節機能と発汗機能を模擬したマネキンです。
発汗サーマルマネキンには、発汗量固定(事前設定)の第一世代と、
体温を一定に保つように、発汗量を制御できる第二世代の2種類あります。
発汗機能を持たないサーマルマネキンもあります。

発汗サーマルマネキンを活用すると、機能衣服(冷却機能を持つ衣服や、暖かくなる衣服)の
性能を数値化することができます。
その結果、機能衣服の性能をカタログ等でアピールしたり、
改良の効果を数値で比較検討できるので、
機能衣服の開発期間を大幅に短縮することができます。

    サーマルマネキンの分類
機能 サーマルマネキン 発汗サーマルマネキン
第一世代(他社) 第二世代(当社)
温度制御
発汗機能 ×
発汗量制御 × ×(事前設定)

●サーマルマネキン(発汗機能無し)

身体を複数のブロックに分割してブロックごとに、
皮膚表面温度を一定に保ち、投入電力を測定する機能や、
投入電力を一定にして皮膚表面温度を測定する機能があります。
加温制御は可能ですが、冷却機能(発汗機能)がありません。
車に例えるなら、アクセルとブレーキのアクセルしかありません。
冬服の断熱性能(clo値)を測定することは可能ですが、
冷却衣服の測定には、あまり向いていません。
また、運動状態を再現するには、冷却機能を持たないため、
熱暴走を防ぐための繊細な制御が必要になります。


●一般的な発汗サーマルマネキン(第一世代)

サーマルマネキンに発汗機能を追加したものです。
しかし、一般的な第一世代の発汗サーマルマネキンは、
最初に発汗量を設定し、常に一定の発汗量で試験をおこなう仕様です。
そのため、ファン付きジャケットなどの冷却衣服を着用すると、発汗量がどれだけ
増減するか未知数の場合は、説得力のあるデータが得られません。
運動状態を再現する場合は、事前の発汗量の設定を誤ると熱暴走します。
そのため、オペレータには結果を予測できる専門知識が必要になります。

 一般的な発汗サーマルマネキン(他社)の問題点
一般的な発汗サーマルマネキンは、全身に約140個の発汗孔があります。
発汗孔の間隔は約10cmです。全身に黒色のタイツのような人口皮膚を装着し、
汗に相当する冷却水を人口皮膚表面に拡散する仕様です。
この方式の欠点は、第1に1つの発汗孔からの拡散面積が半径50mmと広すぎて、
発汗から気化までのタイムラグが大きくなり、発汗による温度制御ができません。
第2に各発汗孔からの発汗量にムラがあります。
第一世代の発汗サーマルマネキンの画像第一世代の発汗サーマルマネキンの発汗ムラの画像
写真右の発汗量は300ml/m2/h(全身で510ml/h)です。

特に微量の発汗は苦手です。
理由は、特開2009-249800によると次のとおりです。

    大量発汗時
第一世代の発汗サーマルマネキン大量発汗時
解説:マネキン外部のポンプ40からチューブ30でマネキン内部の各ブロックに送水し、図示41~44の
複数のチューブに分岐しています。実際には1本のチューブを10本程度に分岐しています。
大量発汗時は、図のように比較的ムラ無く発汗します。
ムラ無く発汗させるには400ml/m2/h(全身で680ml/h)程度の大量発汗が必要との情報があります。

    少量発汗時
第一世代の発汗サーマルマネキン少量発汗時
解説:少量発汗時は、一番下部の分岐44に発汗が集中し、残りの図示41~43チューブでは
高低差で逆流して空気を吸ってしまいます。これでは、均一な発汗になりません。
これを解決するには、ポンプの数を増やして途中の分岐を全て無くすことが一番ですが、
ポンプを140個以上装備するのは現実的ではありません。

特開2009-249800では、各分岐にチェックバルブを装着し、
発汗ムラを抑える発明が開示されていますが、約140個のチェックバルブのクラッキング圧力(開閉圧力)を
全て揃えることは現実的には不可能です。クラッキング圧力にバラツキがあると、
むしろ発汗ムラを拡大する可能性の方が高いと思います。
この出願は、みなし取り下げになっているので、実現できなかったのではないかと思います。

●当社の発汗量制御型サーマルマネキン(第二世代)

発汗量を制御して皮膚表面温度を一定に保つ機能があります。
発汗量は最少12.5ml/h(気相発汗)から最大900ml/h(液相発汗)まで制御します。
特に微量発汗による温度制御を得意としています。
加温制御機能と発汗による冷却制御機能を備えるため、熱暴走の心配がありません。
任意の運動条件(例えば200Wの運動や肉体労働)を設定し、過酷環境の再現も可能です。
発汗量を一定に設定することもできます。
発汗を止めてサーマルマネキンとして、衣服のclo値を測定することも可能です。

*気相発汗・・・皮膚表面のうるおいを保つ発汗で、すぐに気化して汗とは認識できません。
*液相発汗・・・身体の冷却のための発汗で、汗として認識できます。

第二世代の発汗サーマルマネキン

●当社の発汗量制御型サーマルマネキンの特徴(特許出願中)
1、発汗腺に中空糸膜を採用
当社の発汗量制御型サーマルマネキンには発汗ムラが極めて少ない中空糸膜を採用しました。
中空糸膜を約20mmピッチで配置し、模擬皮膚に10mm浸透すれば、模擬皮膚表面の全体に拡散します。
中空糸膜を密に配置すると、発汗から気化までのレスポンスが良くなり、
発汗による皮膚表面温度制御が可能になります。

中空糸膜による発汗量制御型サーマルマネキン発汗量制御型発汗サーマルマネキンのサーモグラフィー

*中空糸膜(ちゅうくうしまく)とは、直径1mm以下のポリエチレンチューブ表面に無数の微細な孔を
形成したもので、家庭用浄水器や大規模な浄水場の濾過フィルターとして使用されています。
中空糸膜の顕微鏡写真 中空糸膜を利用した発汗システム
中空糸膜表面の電子顕微鏡写真 中空糸膜の濡れの様子

2、有効発汗と無効発汗の切り分けが可能

発汗量を気化熱換算して加温と冷却の熱収支を計算し、身体の冷却に寄与した有効発汗と、
身体の冷却に寄与しない無効発汗量を切り分けることができます。

*無効発汗とは、大量の発汗で気化せずに滴下した汗や、汗の気化熱が
大気の冷却に作用した場合を意味します。

3、オペレーターにやさしい操作性

一般の発汗サーマルマネキンは、専門知識が必要で、
条件設定や、試験後のデータ処理が難しく、素人が扱える物ではありませんでした。
弊社の発汗サーマルマネキンは、プルダウンメニューから試験メニューを
選ぶだけで、専門知識が無くても操作できます。
また、試験終了後に、生データ(csvファイル)をエクセルの雛型に貼付けをおこなうだけで、
自動計算により簡単にデータ整理ができます。
また、専門知識を持ったオペレータであれば、任意の設定や、
10ステップまでのパターン運転(例えば1時間ごとに運動量の変更)が可能です。

4、リアルタイムモニター
各ブロックごとの皮膚表面温度、周囲温度、加温W数、冷却W数と、
発汗量を精密に計測する秤のデータを、デジタル値とグラフで、
リアルタイムにモニターできます。


5、エタノール殺菌機能
発汗サーマルマネキンにおいて、一番心配なのは、試験後に長期間保管されると、
完全に排出されなかった残留水にバクテリア(ヌメリ)やカビが発生し、
中空糸膜を短期間で目づまりさせてしまうことです。
当社の発汗サーマルマネキンは、実験終了後の排水処理行程において、
全自動的でエタノール殺菌をおこなう機能を備えています。

6、低価格
サーマルマネキンは1体約2千万円、第一世代の発汗サーマルマネキンは1体約3千5百万円です。
当社の発汗量制御型サーマルマネキンは、第二世代の高機能でありながら、
価格は第一世代の発汗サーマルマネキンの1/10以下を実現しました。