ボーケン・トピック370号との測定方法の違いについて
一般財団法人ボーケン品質評価機構は、
ユニチカガーメンテック社と共同で、2023年8月から冷却ウェアのクーリング試験を開始しました。
ボーケントピック・370号
体温調節ラボの測定方法とは、大きく異なるので、解説します。
1、発汗量の違い
ボーケンの測定は、第一世代の発汗量固定の発汗サーマルマネキンを使用して測定します。
発汗量の設定は、パンフレットには書いてありませんが、電話での問い合わせによると、
400ml/m2/hだそうです。全身の表面積1.7m2で換算すると、発汗量は680ml/hになります。
人体で8時間の作業を想定すると、5.4リットルの汗が必要ですから、尿や呼気からの水分の
損失を考慮すると、8時間で、6~8リットルの給水が必要になります。
いくらファン付きジャケットと言えども、こんなに大量を汗を気化させることはできず、
約半分が滴下して無効発汗になると思います。
つまり、何を測定しているかといえば、発汗による気化熱が飽和した状態での最大冷却能力であり、
自動車に例えるならば、無限に続く直線道路で、アクセルをいっぱい踏み込むと最高時速何km出るか?
という測定に近いです。
それに対し、体温調節ラボの測定方法では、体温を37℃に維持するための必要最小限の発汗量を、
測定しています。人体の機能に極めて近い測定方法です。
2、発汗による気化熱の評価方法の違い
ボーケンの測定では、汗による飽和状態の気化熱を、ファン付きジャケットの性能の一部として評価しています。
これに対し、体温調節ラボの測定方法では、汗による気化熱をファン付きジャケットの性能に加えていません。
汗は人体から出るのであって、ファン付きジャケットから出ているのではありません。
ファンの風は、人体の持つ冷却能力を補助しているに過ぎないと考えているからです。
考察
①扇風機に冷房能力を表示することはできません。
②ファン付きジャケットの性能を測定しているのに、着用者によって性能が変化するということは、
同時に着用者の性能を評価していることになります。もし、誤解の無いように性能表記するとしたら、
例えば 「このファン付きジャケットの冷却能力は、着用者によって異なります。
発汗能力の高いアスリートが短時間の最大限の運動時のみ、カタログの冷却性能が発揮されます。」
といった表現が必要になるでしょう。
体温調節ラボの理論式では、ファン付きジャケットの性能には、人体の発汗による気化熱が入りません。
ただし、無効発汗が有効発汗に変わった領域では、発汗量の減少となってデータに表れます。
ですから、誰が着用してもファン付きジャケットの冷房能力は、カタログ表示上は変わりません。
外部から汗の変わりとなる水分を物理的に供給する冷却衣服については、供給した水分量の気化熱のみ
冷却衣服の性能に含まれます。また測定結果は、冷却性能分だけ発汗量が減少します。
3、運動量の違い
ボーケンのパンフレットを分析すると、周囲温度が変わると、放熱量が大きく変化しています。
すなわち運動量(メッツ値)が変化していることを示しています。
人体では、同じ運動量であれば、外気温度が上昇すると、発汗量が増えます。
つまり、外気温度が上昇するにつれて運動量を下げなければ、ボーケンの発汗量一定の条件に
当てはまりません。
この運動量が外気温度により変化する条件で計算した想定環境温度(参考)とは、何を表しているのでしょうか?
体温調節ラボでは、運動量を一定の条件で実験をおこないます。
測定結果は、冷却能力何W、有効発汗何ml、無効発汗何mlといった数値になります。
では、着用したら何℃低下するか?については、その時の条件により異なるので、正確に表現できません。
例えば、LED電球の明るさはルーメンという単位で表しています。(光源から放たれる光の量)
机の上の明るさの単位はルクスです。
LED電球を机に近づけると、明るさは上昇し、ルクス値も増えます。
このルクスに相当するのが、冷却衣服の何℃低下するかに相当し、ルーメンが冷却能力何Wに相当します。
4、まとめ
上記3項目の測定方法の違いにより、ボーケンと体温調節ラボの試験結果は大きく異なり、
測定結果を比較したり換算したりすることは、できません。
体温調節ラボでは、ボーケンとユニチカガーメンテック社に対し、取得したデータに整合性が取れるように、
2023年8月29日に具体的な試験方法の改善を提案していますが、現在のところ、進展はありません。